目標達成のために役に立ちそうな数式と考え方
お金を掛ける以上、Webサイトにおける目標は必ず立てるべきですが、単純に「問合せを30件/月!」のように掲げても、正直やりようがないでしょう。
その最終的な目標に到達するためには、数式を持つ必要があります。最近では、俗にKPIと言われているものでしょうか。
例えば冒頭の『問合せ30件』であれば、「訪問件数 A件 × 問合せ率 Y% = 問合せ 30件」が最もシンプルな数式です。(問合せが30件で人ではないので、訪問件数が最も外。)
そして、この訪問件数 A を最大化するならば、広告宣伝なりの集客面を強化すればいいですし、問合せ率 Y を最大化するならば、Webサイトの企画を強化し、また構造を改善すればいいわけです。
現実的には、A を最大で Y を無視、A を無視して Y を最大化、そのいずれもできませんので、現実的なバランスを考えて設定することになります。そのためには、A と Y だけでは鉛筆なめるくらいしかできませんので、ブレイクダウンします。
その方法ですが、あまり難しいことを書き並べても使い勝手が悪いので、個人的によく使う考え方を紹介したいと思います。
まず、目標に近い位置にある数字である、問合せ率 Y の推定を行います。ポイントとしては、”ページ移動の度に人は減る。その残存率を計算式にする” ことです。
- TOPページから、問合せ完了ページまで全何ページの閲覧が絶対に必要かを求めます。
例えば、『TOPページ→サービス一覧→サービス詳細→会社概要→問合せフォーム→問合せ内容確認→問合せ完了』のように、考えられるランディングページから問い合わせ完了までのすべてのページが 7 ページあるとしましょう。 - 訪問者の残存率モデルを設定し、Y のモデルケースを算出します。
・ランディングページを 0.2ポイント
・ランディングページより後、問合せフォームより前を 0.4ポイント
・問合せフォーム以降問合せ完了より前を 0.6ポイント
・問合せ完了ページを 1ポイント
のように残存率を設定し、各該当するページ数でべき乗計算します。1の例ですと
・ランディングページ = 1 ページ
・ランディングページより後、問合せフォームより前 = 3 ページ
・問合せフォーム以降問合せ完了より前 = 2 ページ
・問合せ完了ページ = 1ページ
という構成になっていますので、計算は以下のようになります。0.2の1乗(0.2)×0.4の3乗(=0.064)×0.6の2乗(=0.36)×1の1乗(=1) = 0.004608(0.46%)
残存率を考えることで、目的達成に不要なページを明確にすることができます。目を付けるべきは、訪問者が情報を得られない、訪問者に作業を強いてしまうページがどこかを考えることです。
上記例の場合、「サービス一覧」と「問合せ内容確認」が概念的にはこれにあたり、なくすべく検討しても損は無いページと考えられます。「サービス一覧」と「問合せ内容確認」を無くした場合、残存率モデルは
0.2の1乗(0.2)×0.4の2乗(=0.16)×0.6の1乗(=0.6)×1の1乗(=1) = 0.0192(1.92%)
と計算され、4倍の問合せ率を期待できるように思われます。一旦、Y を 1.92% と仮定しましょう。
続いて、訪問件数 A の最大値予測を立てるのですが、こちらは簡単です。広告予算総額に対して、広告が1件の訪問を稼ぐのに現実的な単価により、Aの最大値を推定するのです。
- 自社のターゲットが多く含まれると思われる広告媒体や広報媒体をピックアップします。
- メディアシートを取り寄せ、時にヒアリングもし、広告から得られる1クリックの単価を知りましょう。
- 予算を平均のクリック単価で割って、得られる訪問件数を算出します。
計算例:
予算はさすがに決められていることが多いでしょう。例えば、月に20万円使えるとして、メディアシートで確認したところ、1クリック90円くらいが相場だと分かったことにします。
もちろん、広告以外からの訪問もあるでしょうが、一旦ここでは無視するとして計算しますと「200,000円÷90円=2,222クリック獲得」となります。これで、A も求めることができました。
以上をまとめると
訪問件数 2,222件 × 問合せ率 1.92% = 問合せ 42件
となり、達成です!!(あくまでもモデルケース的には。)
問合せ率が 0.46% のままであれば全く目標に届かない水準ですね。早速、広告宣伝をはじめる前に、サイト構造を見直すべきです。
尚、「なら全部1ページにしてしまえばいいのでは?」というアイデアが、いわゆる広告用ランディングページです。これはこれで、物理的に1ページにしてるだけですので、単純にページが減ったと考えて計算してはいけないところです。
ここまで計算したら、改めて、訪問件数の背景にあるクリック単価に余裕があれば、より良質なクリックを得られそうな媒体を検討したり、問合せ率の背景にあるページ遷移のモデルケースを検討するということを行い、過去のデータなど共照合して、現実的に達成が可能な数値になるのかどうなのか。現実的で無いならば、目標自体の再検討や予算交渉と行ったところに踏み込む必要があります。
商品を説明しきるまでに、何ページ必要なのかという考え方から、何人(何件)が耐えられるのか、そのために何人(何件)呼ばないといけないのか。この考え方が Webサイトの目標値へのアプローチをする基本になります。